医療現場の現状と諸問題を考える

患者の転院をスムーズにするため、病院間の連携システムを構築する動きが活発化

急性期病院としての診療体制を採っている医療機関は、回復期に入りリハビリが治療の中心となった患者は、早期に回復期リハビリ病院に転院を考慮することになります。全身状態が落ち着いていれば、術後約1週間に家族とのインフォームドコンセントとの機会をつくり、可能ならソーシャルワーカーと連携し、転院先を相談してもらうようになっています。

このような転院をスムーズに行うためには、急性期病院と回復期病院との緊密な連絡が必要であり、病院間にもまたがるクリティカルパスを使用することが理想的です。このように病院間の連携を構築しようとする構想は全国的に広がっています。

日本の病院と診療所をめぐる状況は深刻になっており、2007年度決算では、自治体が運営している病院の7割超が経営赤字に陥っており、資金切りの行き詰まりを示す不良債権の額は過去最高の1186円に達しました。

国が定めた経営健全化基準に抵触した自治体病院は668会計のうち53会計に達しており、その多くが病床の削減や診療所への転換などのリストラを迫られています。

規模縮小で赤字が縮小されても、同時に医療機能も縮小し、診療科目が張ったり入院できなくなったりする可能性が高くなります。最近では千葉県銚子市や大阪府の松原市のように、財政難を理由に病院を突然、閉鎖する自治体も出てきています。また効率化を理由に民間の資金や経営手法を導入したものの、逆に運営費がかさんでしまい提携が解消される事例も報告されています。

病気を診断するうえで指針となるものが「診療ガイドライン」で、患者に対する治療の実績や、学会等での研究を通じて収集されたデータを元に推奨レベルが決定されます。例えば、脳卒中の診療ガイドラインは、日本脳卒中学会によって2009年に作られていて、グレードAからDの4段階に分かれています。

推奨するだけの根拠があるグレードAとBは非常に少なく、例えば膵臓がんの場合、グレードAとBはたったひとつしかありません。このため最近の研究結果や患者の病状などを考慮し、診療ガイドラインで推奨されていない治療を行われることもあります。また、病気によっては、診療ガイドラインが存在しないこともあります。

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